常勤医5名が専門領域を横断して診る訪問診療
内科・泌尿器科・整形外科・脳神経外科・麻酔科——アカシア在宅クリニックには異なる専門領域を持つ常勤医師が5名在籍している。複数の慢性疾患を同時に抱える患者であっても、院内で情報を共有しながら一つのチームとして診療にあたれる体制が組まれている。血液検査や超音波検査、緩和ケアまで自宅で実施できる範囲は広く、通院していた頃と遜色ない医療を居住空間のなかで受けられる。がんや脳卒中の後遺症、認知症といった疾患ごとに対応を切り替えるのではなく、一人の患者の全体像を複数の視点から捉える診療スタイルを取っている。
開設からこれまでに支援した患者数は1,000人を超え、現時点でも230名以上が継続的に診療を受けている。個人的には、在宅クリニックでこれだけ多領域の常勤医がそろっている例はあまり聞かないと感じた。訪問先で心電図やじょく創処置、胃ろう交換まで対応するため、家族が患者を病院へ連れ出す場面そのものが減るという声が目立つ。在宅酸素やインスリン管理の指導も訪問時にセットで行われている。
習志野市を起点にした24時間の緊急往診ネットワーク
夜間に容体が急変したとき、電話口に出るのは外部のコールセンターではなくクリニックの常勤職員である。習志野市を拠点に置くアカシア在宅クリニックでは、24時間体制で電話を受け付け、状況に応じて医師がそのまま緊急往診に向かう仕組みを運用している。対応エリアは習志野市全域に加え、船橋市の前原西・飯山満周辺、千葉市花見川区の幕張本郷や長作台などにも及ぶ。移動時間と到達性を計算したうえでエリアを設定しており、呼ばれてから到着までの時間的なロスを最小限に抑えている。
「深夜2時に電話したら、30分もしないうちに先生が来てくれた」——こうした利用者の声は少なくない。休日や年末年始であっても連絡手段が途切れない点が、在宅療養を続ける家族にとって大きな支えになっているようだ。メールでの日程調整や急な相談への折り返しも早く、日常的なやり取りのハードルが低いと感じる利用者も多い。電話一本で診療スケジュールを動かせる柔軟さが、生活リズムを崩さない在宅医療を成り立たせている。
再入院を防ぐための観察と生活単位の介入
訪問のたびに確認されるのは病状だけではない。服薬の飲み忘れがないか、食事量や栄養バランスに変化はないか、皮膚の状態に異変はないか——アカシア在宅クリニックの診療では、こうした日常の小さなサインを拾い上げることに時間を割いている。体調の微細な変動を早い段階で捉えることで、症状が悪化して入院に至るリスクを手前で食い止める。気管切開チューブの交換や経管栄養の管理といった専門的処置も自宅で完結するため、患者が移動によって体力を消耗する場面が生まれにくい。
ある高齢患者の家庭では、訪問時に栄養状態の偏りを指摘されたことをきっかけに食事内容を見直し、数カ月で体重が安定したというエピソードがある。インスリン自己注射の手技確認や在宅酸素機器の操作指導なども、繰り返し丁寧に行われる。症状の推移に合わせて診療計画そのものを書き換えていく運用で、「一度決めた計画に縛られない」という柔軟さが再入院率の低減につながっている。
家族の負担を減らす多職種連携と意思決定の伴走
介護を担う家族が疲弊しないよう、アカシア在宅クリニックでは具体的な介護手順の指導や生活動線の見直し提案を訪問時に組み込んでいる。排泄介助の負担軽減策、体位変換のタイミング、夜間の見守り方法など、医療知識を前提としたアドバイスが現場で直接伝えられる。ケアマネジャーや訪問看護ステーション、介護事業所との連絡調整もクリニック側が窓口を担い、家族が複数の事業者と個別にやり取りする手間を省いている。
看取りの段階に入ったとき、治療方針の選択や療養場所の判断を家族だけで背負わなくて済む体制が整えられている点は見逃せない。医師が選択肢とそれぞれの見通しを示したうえで、患者本人と家族が納得できるまで対話を重ねるプロセスが取られている。「最期まで自宅で過ごせたのはクリニックのおかげ」という感謝の言葉が寄せられることも珍しくないという。医療面と生活面の境界を意識的にまたぎながら、療養の全期間を通じて関わり続けるクリニックである。


